歴史の香りを感じに
わたしは西洋史が好きで、ファンタジーが好きで、つまりまあ、そういう古そうな、ロマンあふれる感じの雰囲気が好きだ。なのでバレットジャーナルの見出しやちょっとしたロゴはそんな雰囲気に描くことが多い。
「金古美」だとか「羊皮紙」だとか「古地図」だとか「騎士」「教会」…そんな単語たちから連想するような世界観が大好きなのである。伝わるだろうか。
先日、西洋の歴史を感じられる店に立ち寄ってきた。
店の名前は「サンタ・マリア・ノヴェッラ」。イタリアはフィレンツェにある、世界最古の薬局、その銀座支店である。
銀座三越だとか、有楽町ITOCiAだとか、銀座LOFTだとか、銀座伊東屋だとか、高級デパートから文房具の楽園まで、とにかく有名店が多い銀座の、小さな通りにあるサンタ・マリア・ノヴェッラ。Googleマップに何度か叱られながら辿り着いた。
チョコレートブランドのピエール・マルコリーニのそばだ。
撮影の腕が悪くて白黒にしたが、これでも日本だ。
店内は撮影禁止だが、一歩踏み入れるとそこは日本の空気ではなかった。
歴史が巻き戻ったような、そんな雰囲気だった。
薬瓶のようなシンプルながら、ラベルの飾り文字が優雅な香水瓶。それが納められた鍵付きの棚が壁を覆い、花と草の香りが店内を満たしていた。元は修道会の薬局だが、メディチ家から王に嫁ぐ娘を輩出する際に、修道会へ香水を発注、「王妃の水」と呼ばれるその香りが、オーデコロンの発祥と言われているという。
映画にも登場する。
「羊たちの沈黙」シリーズのハンニバル・レクターも、この店の香りを好んでいる(香りを嗅ぎ当てたり)描写がある。
この店は現代ではいわゆる香水屋さんだ。
香りのよい石鹸やシャンプー、アロマオイルなども扱っている。先述の王妃の水も、当時のレシピのまま販売されている。
全てイタリア語読みのカタカナで書かれた商品リストからは、どんな香りなのか、俗人のわたしには全く分からない。香りのテスターなどは表に出ておらず、店員さんに声をかけてカギを開けてもらわねばならない。
興味本位で立ち寄ったわたしは、そのお願いをすることはできなかった。
当時の修道会で作られたときからレシピを変えていないというタブレット1つ買い、そのついでに店員さんにお願いして見本の「王妃の水」をテスター用の紙(ムエット)に吹きかけて嗅がせて頂いた。瑞々しくて上品な、柑橘系の香りだった。
一日経って、王妃の水を吹きかけた紙の香りが変わっていた。
トップノートが柑橘系だったが、今は優しい花の香りになっている。心地いい。
わたしはヨーロッパの雰囲気が好きで、西洋史が好きで、ファンタジーが好きで、つまりまあ、そういう古そうな、ロマンあふれる感じの雰囲気がする小物を集めているのだが、この店の品はさすがに格が違った。
この店で取り扱うルームコロンにふさわしい部屋を作り上げて、また来ようと思う。